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「……」
萌佳は、しばらく黙っていた。
手をこぶしにしてギュッと握りしめながら。
「萌佳……一緒に帰ろう」
「ほっといてよ! 一花には関係ないじゃない!」
「ちょっと、君達。私をほったらかしてケンカしないでくれよ」
中年の男性が、ニヤニヤしながら気持ちの悪い目付きで私を見た。
「萌佳、こんなこと絶対ダメだよ。お願いだからもっと自分を大事にして。ほら、帰るよ」
私は、萌佳の手を握って無理やり引っ張った。
こんな気持ちの悪い人と早く離れさせたかったから。
「痛い、離してよ!」
「嫌、絶対離さない!! 絶対離さないから!」
その時、その男性が私の体に後ろから抱きついてきた。
お酒の嫌な臭いがする。
「何ごちゃごちゃ言ってるんだ」
「ちょっと、止めて! 離して!!」
背中に張り付くこの男が、心底気味悪くて虫唾が走った。
「あんたも一緒に遊ぼうよ。3人でホテルに行こう」
最低の男に絡まれ、悔しくて涙が出た。
周りには誰もいない。
絢斗……助けて……
いやだよ、このまま何かされたら私……
「ウザイんだよ! 離れろ!」
えっ……?
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