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「萌佳?」
振り返ると、そこには男が倒れていた。
「イ、イテテ……」
腰を押さえながら、立ち上がろうとする男。
「萌佳、行こう!」
私は、萌佳の手を再び握って2人で走り出した。
どこまでも、走った。
息を切らしながら。
萌佳の手、温かい。
走りながら、思った。
私には、萌佳を嫌うことなんてできない。
ずっと励まし合ってきた大切な大切な親友なんだから――
「ここまで来たら……もう大丈夫。萌佳、怪我……してない?」
息が苦しい、何度も深呼吸する。
「う、うん……大丈夫。一花……は?」
萌佳も息を整えようと頑張ってる。
「全然……大丈夫。萌佳が、あの男を?」
「う、うん。あいつ一花に抱きついて……もし一花に何かあったらって……急に怖くなって。そしたら、ものすごく腹が立って許せなくて、気づいたら蹴っ飛ばしてた」
私は、萌佳の言葉が嬉しかった。
正直、さっきの男の感触が残ってて死ぬほど気持ちが悪かったけど、それは萌佳には言わなかった。
「ありがとう……本当に助かったよ。でも、良かった、萌佳に会って」
「私、もし一花に会わなかったら……あいつと……」
萌佳は、その瞬間、泣き出した。
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