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私は、そんな萌佳を見て思わず抱きしめた。
「つらかったんだよね。何かつらくて、たまらなくて、あんなことしたんだよね」
「ごめん……一花、ごめん……」
萌佳は、しばらく泣いていた。
子どもみたいに泣きじゃくって……
そんな萌佳が可愛らしく思えて、私は自分が言われた悲しい言葉のことは、もう何も思わなくなっていた。
萌佳は――
本当は、やっぱり優しい子なんだ。
「落ち着いた?」
私は、萌佳の瞳から流れ出るキラキラした雫をハンカチでぬぐった。
「聞いて……一花」
私は、うなづいた。
「私ね、昔から自分より人気がある一花がうらやましくて、それで……ヤキモチ妬いてた。気づいたら同じ人を好きになってて。しかも、その人は一花のこと……」
「もしかして……総支配人?」
萌佳もうなづく。
そんな……萌佳も総支配人のことが好きだったの?
「私、総支配人に言われたの。本当は、ちゃんとわかってるんだろう? って。悪いのは一花じゃない、私の敗北感が憎しみを抱かせてるんだってこと。悲しかったけど、総支配人の言ったことは全部当たってるんだよね……」
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