お客様のために

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実際、娘さんの嬉しそうなお顔を見たら、全ての苦労が一瞬で吹き飛んでいった。 「すみません……」 「はい、工藤様。どうかなさいましたか?」 私は、カウンターに来た工藤様というお客様に尋ねた。 「あの……財布を無くして……どこにも無くて」 か細い声のそのお客様は、工藤 佑(くどう たすく)さんという大人気作家さんだ。 もう半月以上ここで執筆をされている。 少しだけ髪を伸ばして、緩いパーマをかけてて、うっすら無精髭を生やしている。 見た目は、少しルーズっぽく見えたりするけど…… でも、不潔感は一切ない。 近くで良く見たら、眼鏡の奥の瞳が憂いを帯びていて、とっても綺麗で。 細身で、身長も180cmはあると思う。 推理小説家というよりは、渋めのイケメンモデルさんみたいな……そんなイメージだ。
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