ぼくの夏休み

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 僕の名前は梶ヶ谷弘樹(かじがやひろき)、11歳の小学5年生。  毎年、夏休みになると、お母さんの方の爺ちゃん婆ちゃんちに遊びに行くのが楽しみだった。  ここにはいっぱい自然があって、虫も取り放題だし、何より空気がウマい!(お父さんがそう言ってた)  僕は夏休みが終わっても、ずっと爺ちゃん婆ちゃんちに居たいなぁ……って毎年思ってる。爺ちゃん婆ちゃんも「そうしろ」って言ってくれるけど、結局、学校があるからって東京に帰らなきゃいけない。  だから今年こそは――  決めたんだ。いつもは途中までした入ったことのない、爺ちゃんちの裏手にあるこの森の向こう側に何があるのか、今年こそ探検するって!  もちろん大人には内緒だ。だって、言ったら絶対止められるに決まってる。  背中のリュックには、爺ちゃんが買ってくれたお菓子とジュースを詰め込んできた。それに、誕生日に買ってもらった携帯ゲームとお父さんのお下がりの双眼鏡も。  僕だってもうすぐ6年生なんだから、一人で冒険くらいできる―― 「あっ……」    僕の目の前に、川幅はそんなに広くないけれど、流れの急な川が姿を現した。森の奥へ進むならこの川を渡らなければいけないみたいだ。  僕は辺りを見回してみる。どこかに橋はかかってないかな? そう思ったけれど、近くに橋のようなものは見当たらない。渡れそうな丸太も。  僕はゴクリと唾を飲み込み 「よーし、このまま強行突破するぞ!」  これは冒険だ、これくらいの危険はつきものなんだ――僕は川に一歩足を踏み入れた。  流れは確かに早いけど思ったより深くない。これなら楽勝で向こう側へ渡れるぞ。  僕はためらうことなく、ジャブジャブと水音を立てて川の中に入って行く。 「うわっ!」  いきなり川が深くなった。僕は流れに足を取られて、ブクブクと川に飲み込まれてしまった。  浮き上がりたくて流れが速すぎて、足を川底につけることが出来ない。  (く、苦しい、息が出来ないよ。僕……死んじゃうの?) 「ひろき! ひろき!!」  もがきながら流される僕の耳に、微かに僕の名を叫ぶ声女の子のが聞こえたような気がした……
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