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「──10円玉?」
手で触れようと腕を動かしたその時、違和感を感じた。
そう、腕の点滴の繋がりが邪魔をしたのだ。
そして、点滴用の液体パックの中が空になっていたことに気づく。
ナースの女性から教えて貰った通り、ナースコールを押し、人を呼ぶ。
それからすぐに、先程確認に訪れたナースの女性が現れ。
「どうされましたか?」
彼女は、先程よりも少し足早に入り込んで、疑問する。
「点滴の液体が切れたみたいです」
それを聞いた彼女は、ハッとした顔で点滴を取り外しながら、「分かりました」と顔を動かし、周りを見渡す。
「あ、ご家族の方、帰られたんですね。井幕さんが目覚められた時に寝ていらっしゃったので、まだいらっしゃるのかと」
疑問を感じ、首を傾げながら、それは有り得ないと井幕は否定を表す。
ナースの女性は不思議がる顔をしながらも、口を閉じ、話を終える。
そして、別の話題へ──。
すぐに退院を出来る事に話が決まった。
──1時間後。
病院から外に出ると、さほど暑くはなかった、少し曇り空。
その中で家へと帰宅する。
手荷物は財布のみで、歩き出す。
ちょっとばかしの、半信半疑になる要素を出る直前に盛り込まれながら。
退院する少し前まで確かに短い間だか、入院をしていたので料金を払おうとしていた時のこと。
ナースの女性から、衝撃の発言を食らわされた。
「あ、すでに料金はお支払いして頂けてますよ」
一体誰に? そう思う状況。
ナースの女性が言うには、歳50程に見える女性の方が見舞いのついでに払ったとの事だ。
だが、その女性を僕は見ていない。
お見舞いに来たのはその人だけで、他は来ていない。
僕が目覚め、ナースの女性が確認に訪れた時にも、確かに居て、椅子で眠っていた。
──でも、僕はやはり見ていない。
おかしいなぁ、と考えながら歩いていた、その途中、家以外の場所に着いてしまったのに気づいた。
「────」
目の前には、駅のホームが見えている。
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