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硬貨7円目 失敗
全てのプランを自分自身に打ち砕かれ。
帰宅一択となってしまった。
──否。初めから、その選択しかなかったのかもしれない。
気だるげな身体は今まさに、ただの重り同然の役割を果たし始める、それを足で支え続けるにも限界を感じる所、だが休憩は出来ない。
少し語弊が生まれそうなので言い方を変えると、ここでは休憩しない方がいい。
そんな状況下に置かれてしまっているのだ。
理由は1つ、今この周辺には日陰がない、全くと言える程に、凶運。
真上。直角90度。そこに太陽が昇っている、時刻は正午へと到達した。
ただそれだけの理由。
休憩しようにも休憩出来ない状況との直面、ちょっとでも止まるだけで意識が持って行かれそうになる、つまり立ち止まる方が危ないと言えるのだ。
だからこそ、今も帰宅しようと歩き続ける。
身体から汗が浮き出るその度、それと同等に蒸気が発生し続ける、まるで歩く蒸気機関車(SL)状態。
昔懐かしの、蒸気機関車を思わせるその姿は日に焼けていくことで黒く変色し、更にそれを連想させていく。
「また、乗りたいな......。」
彼もまた自分の身体から漏れだす蒸気に、想いを馳せ。
自分の過去を振り返り始める。
──走馬灯のように。
足を前へと進ませる、その行動は少しずつゆっくりとなり、次第に歩幅も狭くなる。
身体が悲鳴をあげている、もう動けない程に疲れてしまったようだ。
そんな中でまだ進み続けようと目を上げる、するとそこには──。
「やっと...着いた......。」
彼の歩みはここで止まった──。
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