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この世の法則は理不尽だ-2
「今日は3箇所か。 手っ取り早く隣町で済ませとく?」
僕は緊張気味に、僕の横を歩むショートカットの美女に声をかけた。
「そうだね。 どこも危険度はDだし、遠くに行くだけ財布に苦しいもんね」
僕と彼女はスマートフォンの画面を眺めている。
そこには地図が開かれており、通知欄には3つの通知が来ていた。
『ホールの出現を確認。 周囲のハンターはホールへ調査をお願いします』
その通知をタップするとどれも『危険度D-出現ホール内の調査、及び必要に応じて出現モンスターの狩猟をお願いします』と表示されている。
ホールとは、この現代に突如出現するようになった異世界との繋ぎ目。
そこに入ると、異世界に通じており、これまでの調査で分かっていることと言えば、この異世界は僕達人間、つまりハンター側と、モンスター側それぞれに出現したホールが異世界に繋がる。
つまり3つの世界が存在して、この異世界に両方の世界からモンスターと、ハンターが流れ込む。
一見、ゲーム様な内容だが、ここでの死は実際の死に直結している。
「それじゃあここから歩いて10分くらいだし、歩いていこうか」
「そうね、ところで名前を聞いてなかったよね」
僕達が一緒に行動をするようになったのは昨日のこと。
いつものようにホールの出現、調査を行っていた。
周囲には12人程のハンター。
その中に彼女はいた。
たくさん人はいたが、圧倒的な美貌と、危うげな雰囲気に最初から彼女の存在は意識していた。
まるで何者も認めないような、恐れて近づかないようにしているような、危うげな悲しみに満ちた表情。
周囲のハンターがその美貌に惹かれて近付いていくもそそくさと離れていき、虫を寄せ付けない。
(孤独がいいのかな、気持ち分からなくはないけど……)
それでもすぐにホールへ入る点呼が取られて、僕は気を引き締めた。
僕にはこのホールに来る理由がある。
「それではB級ハンターを先頭に、D級ハンター以下は後衛、または補佐をお願いします」
今回は補佐。
雑に列を成したその最後尾に彼女はいた。
僕は後衛の中でも、最前列にいた。
「止まれ!」
B級ハンターの男性が皆の歩みを止めた。
そこは大きな空洞となっていて、今まで歩いた洞窟のような狭いものとは違った。
「こういうところにモンスターは陣取ることが多い。 まずは魔法系ハンターによる光のエンチャントをお願いしたい」
「あっ、それなら僕がやります」
「よかった、光属性を使える人がいるのはとても助かる。 この石にお願いできるかぃ?」
B級ハンターが手に取ったのは4つの石。
そこかしこに落ちている石だが、人間側の世界の石に比べて、魔法のエンチャントの持ちがいい。
僕は石に光のエンチャントを加えると、石は輝き始める。
「これをこの空洞の真ん中に1つ投げる。 モンスターがいれば、魔法系から攻撃、牽制しつつ、私とC級ハンターの彼で一気呵成に猛追する」
「わかりました」
「君は肝が座っていそうだ。 心強いよ」
B級ハンターは肉体的にも鍛え上げられており、持っている剣も身体とそう変わらないサイズの大剣だ。
「それでは……!」
彼の投擲で石は大きな空洞の真ん中にすんなりと位置どった。
ベストなポジションだ。
全体が見渡せる位置で、あの光量なら10分は持つ。
全部いれれば、40分。
不足の事態にも対応できる時間のはずだった。
想定された不足の事態だったなら。
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