この世の法則は理不尽だ-2

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「なっ……」  投擲した石は空洞全体を照らし、その辺りにモンスターは見当たらなかったが、一瞬でそれは間違いだと気付かされた。 「上だ……」  空洞の天井、そこには黒い物体が無数に蔓延(はびこ)っていた。 「蝙蝠(こうもり)系ですかね?」 「そのようだ。 幸いにも気付いてはいなさそうだが、参ったな、飛翔するモンスターをあれだけとなると無傷では終われないぞ」 「それなら僕が囮になります。 それを皆さんで援護してください」 「まて。 とても危険なことだ。 簡単に了承はできない」 「そうしたいのには理由(・・)があります、僕は所謂(いわゆる)、呪い持ちなんです」 「呪いというと、常に悪条件を与えられるという低確率でハンターが持つエンドスキルか?」 「はい。 但し、僕の場合、戦闘に支障が出るものではなくて、生命に支障が出るものなんです」  B級ハンターは真剣に心配するような表情で、頷いた。 「僕の呪いは『1日1レベルは上げなければ、24:00時点で命を落とします』という条件です」 「なんだ、その呪いは……」 「なんでこんな呪いなのかは分かりませんが、ひとまず先頭に立つことが最低条件になります」 「無鉄砲ではやらせれないが、それが本当なら先頭に立たせるのは仕方ないか」 「ありがとうございます」 「君にとって生きることはとても過酷な事だね」 「そうかも、しれないですね」  僕は短刀を1本引き抜いた。  あとは腰に備えている水と、発煙筒。  緊急の食事代わりと、目くらまし。 「それではいきますね」 「うむ、背中は任せてくれ」 「いきます!」  僕は空洞を一気に走り抜ける。  エンチャント石にたどり着いた瞬間、天井を見据えると、1匹の蝙蝠が異変に気付いて、超音波のような叫びをあげる。  同時に無数の蝙蝠が一斉にこちらに視線を集めた。 「こい!」  そこからは魔法が飛び交い、B級ハンターの助けもあり、軽症はいたものの、死者なく乗り越えることができた。  そして僕のレベルも上がった。 「君のおかげで乗り越えられたが、手厳しいな。  入ってすぐで、これ程とは」 「そうですね。 私がいてもこの先の調査は悩ましいな。 もっと組織的なメンバーを揃えた方が――」  ドォォォォン!!  後方から響き渡る爆発音のような音とともに、現れたのは牛のような頭と、剛力を表現するような筋肉、その大きな手には斧。  まるで何かの物語に出る魔物。 「ミノタウルスみたいだ」  振り被った斧は後衛を務めていた後衛ハンターに向けられた。 「まずい!」  その斧は容易く1人のハンターを真っ二つに切り裂いた。  途端、あがる悲鳴と広がる混乱。  状況を整理するために見回すと、あの美女は少し離れたところにいた。 (彼女は大丈夫だな。 それじゃああとは魔法系ハンターの救出を――) 「うわぁぁあああ」  叫びは混乱を招き、混乱は状況の悪化を助長する。  状況としては最悪だった。  そして最悪の事態を招いた。  統率のとれない中、斬撃は空をも引き裂き、B級ハンターの右腕を切り落とした。  周囲を庇っていたB級ハンターに回避の余地はなかった。
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