女心がわからない!

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 おどけたように言うと「ごめんなさい」と口を尖らせた。彼女も少し気が落ち着いたようだ。あまりにも意地らしい姿に、思わず頭をぽんぽんと撫でる。 「いいんだよ、俺は好きで出してるんだから気にするなよ」  ううん、と不服そうに唸った。ははん。これは、どうにかして奢りたいという顔だ。たぶん。 「ああ、じゃあこのあとデザートでも食べに行こうかなあ?」 「デザート?」 「そう、あれがいいなあ、ほら、なんとかジェラート」 「ミルクジェラート?」 「それだ! このあといこうか、奢ってくれるかな?」  ぱあっと彼女の周りが輝き、しっぽをぶんぶん振っている。ように見える。 「うん、いく! 奢る!」 「よおし、じゃあ残りも美味しく食べてからな。あ、あと化粧、落ちてるから直した方がいいよ」 「ええ!」  うそお、と言いながらバッグから取り出した鏡を見て「うわっ」と小さな悲鳴をあげる。コロコロと変わる表情に、ふうっと俺は安堵した。やれやれ、とんだ茶番だな。 「お手洗い行ってくるから、食べててね!」 「はあい、ごゆっくり」  もう、とポーチを持って化粧室に入る彼女を見届けて、改めて残ったパスタを食べ直す。
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