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彼女が泣いている。初めてできた年下の、愛らしい彼女が泣いている。バイト代が入る度に来ている、学生にはちょっとお高めのカフェレストランで、彼女は静かに泣いている。
席につき、注文するまではよかったのだ。先に飲み物が来たとたんこうだ。何がいけなかったのか。
「何かしたかな、俺が悪かったならちゃんと聞きたいから教えて?」
お前ふざけんなよ、とは言わない。そりゃちょっぴり頭をかすめたけれども。彼女は俺のせいではないと言いながら、またしくしく頬を濡らす。周りから見えない席ではあるが、続いて料理を運んできた若いウエイトレスからの視線は痛い。ああ、こんなときどうしたら良いんだ。目に見えて焦ればいいのか、怒ればいいのか? それは違うな。うん、泣き方もかわいいな。いや、そうではなくて。
「そのお、そろそろ泣き止んでくれないかなあ、なんて」
こんなとき、気の利いたひとことでも言えれば女性に困らない人生だろうよ。やっとの思いで単語を絞り出したが、ああ、やはり俺の表情筋が悪いのか。彼女は顔をあげてくれない。下を向くと彼女の柔らかなほっぺが垂れて、真ん中に結ばれた唇はすっかりリップが剥げている。目の下にもシャドウが移ってるんだよな、今は言えないけど。
「……あのね」
おお、きた!
「あの、ほ、本当は」
「なに?」
「うん……」
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