0人が本棚に入れています
本棚に追加
「…あの日事故に遭って、突然この世からいなくなるなんて思わなかったし、最初は全然受け入れられなかった。でも、直人がずっと落ち込んでいるのを見て思ったんだ。まだ未来のある世界に生きる君には前を向いてほしい。僕の分まで楽しく生きてほしいと思ったんだ。」
「そんな…半年経ってもお前がいない世界なんてありえない。そんなこと、」
「そんなこと言われてもって思うでしょ?でも、そうなんだ。実際そうなんだよ…。君が生きる世界というのは誰が死のうが生きようが関係ない。たとえ残酷な世になっても世界は何も変わらず進むんだ。だから、君には一刻でも早く、まっすぐに歩んでほしい。だって君のそばにはいつでも僕がいるでしょ?」
いつも俺のやりたいことに付き合ってくれた佑馬が強く言うことなんてなかった。それほど俺は佑馬を悲しませていたのか…。
「ごめん、佑馬。今までもこれからもお前がいない日常なんてごめんだと思うよ。でも俺、頑張ってみるよ。」
「ありがとう直人。もう少しで時間になってしまう。本当にこれで最後だよ。」
タイマーを見るともう30秒を切っている。
「もっと話したかったよ。でもこうしてちゃんと話せて本当に嬉しかった。」
そういうと直人の声が震える。
「今まで本当にありがとう。僕はいつでも直人を見守ってるよ。」
これが最後の別れだ。あの時言えなかったことを言いたい。
「本当にありがとう。そして本当に、さようなら、佑馬。」
そういうと返事はなくなり、タイマーは00:00と表示される。もしもしと声をかけても返ってこない。ちゃんと送り出したかったけど、本当はもっとずっと話したかったよ。こんな歳にもなって小さい子みたいに涙が止まらない。それでも前に進もう。僕はずっと君を、佑馬を忘れないよ。
【完】
最初のコメントを投稿しよう!