2度目の最期にさよなら

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「ゆ、佑馬?聞こえる佑馬?」 「直人。久しぶり。」 懐かしい声がはっきりと聞こえる。疑いたくなるような優しい声だった。 「本当に…佑真か?」 分かっていても聞きたかった。震えを抑えるようなか細い声になる。 「そうだって言っても信じてもらえないのはわかるよ。二人で中学生の時さ、トイレで水浴びしようとして怒られたことあったの覚えてる?」 そんなことを覚えているなんて思うと涙が止まらない。その日はあまりにも熱い夏の日だった。部活後にこっそりトイレで蛇口をシャワーのようにして汗を流したくてやったら想像以上に水が噴き出て、トイレが水浸しになってしまった。先生にもすぐにばれ、二人ともしゅんとしてしまった事件だった。 「…本当に佑馬なんだな。疑って、ごめん…。ゆ、佑馬…お前…。」 「心配かけて本当にごめんな。元気だった?」 「元気じゃねぇよ、お前がいなくなってからどんな思いでいたことか。」 「…ごめんな。」 そういうつもりじゃないのに強く言ってしまう。 「謝って許されると思うなよ。…それより佑馬も元気だったのか?」 一呼吸置くと佑馬がゆっくり答える。 「もう僕は直人とは違う世界にいるからそういうことを考えたことはなかったけど、元気だよ。」 学校はどう?最後の高体連はどうだった?あいつはどうしてる?直人のお母さん元気?なんてたわいもないことを聞いてくる。学校は受験のために勉強三昧になっていること、高体連はライバル校に惨敗だったこと、あいつは部活引退してから5キロ太ったこと、俺の母親はいつもと変わらないこと。時に笑いながら聞かれたことに一つ一つ答えていく。俺は今どうしているかと訊いたが「ごめん、それは答えられない。」と言う。そういう規則なのだと。 「こうしてまた話せて嬉しいよ。姿は見えないけど、」 「なんだよそれ。俺にばっかり話させてずるいな…。」 そういうと佑馬はぽつりぽつりと話し始めた。
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