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私は寝るのが好きだ。休みの日は予定がなければ親に怒られるまで寝ているし、学校に行くときも1分1秒でも長く寝ていたい。特に起こされてあと5分と伸ばしてもらったときの二度寝の5分間は最高だ。
布団にずっと入ってたいが口癖。
布団かベッドかのこだわりはない。ちょっと重い冬毛布にふわふわの掛け布団があれば正直どっちでもいい。夏はちょっとひんやりする掛け布団がいいな。夏に冬用の布団に入ってひんやりしているところを探しながら寝るのもいいけど。
ああ、ずっと寝てていいなら幸せなんだろうなって思っていた。
そしたら、神様は私の願いを叶えてくれたんだ。
「あなたはどんどん体が動かなくなっていく病気です。まだ治療法は見つかっていません」
私はもう少しで死ぬんだろうなってわかった。先生の顔や今にも泣きそうなお母さんの顔でわかってしまった。
どうしてかな。ずっと寝てていいよって神様は言ってくれているのに、私は全然嬉しくないんだ。
「おっす」
「おお、たけじゃん」
私の病室に幼馴染の猛がやってきた
たけは家が隣で、生まれてからずっと一緒にいる。たけがゲームしている横で私は寝て、たけが野球の試合に出る時も私は観客席でうとうとして…とにかく私が昼寝するときはたけが横にいてくれていた。
「はいこれ、母さんから」
たくさん果物が入った籠を受け取る。
「ありがとー」
たけはじっと私を見つめて立っている。
「まあまあ座んなよ、暇なんだよー。なんか面白い話して!」
「…おお」
私のベッドの横にたけは座った。そして、籠からリンゴを取り出し、かじりついた
「それ私の!」
「…あ?…ああ、どうせお前こんなに食えないだろ」
「まあ、確かに」
静かな病室に、しゃくしゃくとリンゴを食べる音だけが響いた
「お前さー、いっつも布団と結婚したいとか言ってたじゃん」
「うん」
夢叶って良かったじゃんとか言うのかな。こいつデリカシーないもんな。
「母さんからお前が寝たきりになったって聞いてさ、ついに結婚したのかって思ってた」
「ふふっ…ごめん、ちょっと意味わかんない」
なんでこいつはお見舞いに持ってきた果物を真顔で食べながら意味不明なこと言ってくるんだ。
私は笑ってしまったが、たけは真顔のままだから、きっと真面目に言っているんだろうな。
「いやさ、今は二次元のキャラクターと結婚できる世の中だぜ。俺…いつお前がこの布団と結婚する!友人代表スピーチお願いとか言い出すのかなってドキドキしてた」
「ないわ、そこまで頭はいかれてない。そんなんで勝手にドキドキしないでよ」
「マジか、俺ちょっと言葉考えてたのに」
「暇人かよ」
「だからさ、俺、お前が幸せそうに寝てたらどうしようとか思いながらドア開けたわ」
「…最初はせっかくだからってずっと寝てたんだけどさ、いつもみたいに寝てても全然楽しくないんだよね」
「…あー、枕変わったら寝れないタイプ?」
「違うわ」
たけは新しいリンゴに手を出した。
「ね、もし私が幸せそうに寝てたらどうしたの?」
「…幸せそうにしてんじゃねぇよって、叩き起こしてた」
ちゃんと想像したのか、リンゴを握力で砕いた。
「あ、悪ぃ」
たまたま寝ているときじゃなくて良かった。
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