私が起きるまであと5分

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私たちの間に気まずい空気が流れた。 「お前さ、最初病気ってわかったとき、どう思ったの?」 「なんか、嬉しくなかった。病気だわ。私がずっと寝ててもいいって許されたのに、嬉しくないなんて」 「…そっか」 「てかもーほんと、暇!布団あきたー。なんか遊ぶものとか持ってないの?」 「なんだよ、布団との婚約破棄すんのか?」 「婚約してないから」 こいつはまだ言っているのか。思わず笑ってしまった。 「じゃあ俺と婚約するか」 「…なんで?」 私は勢いよくたけの方を向いた。たけはまだ俯いたままで表情はよくわからない。 「俺がしたいから?」 「なんで疑問形?」 「お前が布団を捨てたら他に貰い手いないだろ」 「布団ライバル意識しすぎだろ」 「俺にしとけって」 たけは真剣な顔で私を見つめ、私の手に両手を重ねた。 「本気」 悪い冗談だって言ってくれ。なんだか泣きそうだから。 「本気って書いてマジって読んでもいいよ」 だめだよ、だって私…。 「私ずっと寝たきりだよ」 「俺が会いたいとき自由に会えるじゃん」 「私が会いたいときは無視か」 「お前が俺に会いたくないときなんてないだろ」 たけは自信満々に答えた。 「子供つくれるかわかんないよ」 「ずっと二人でもいいじゃん」 「結婚式とかできないかもよ」 「他のやつに紹介して浮気とかライバル増やしたくないし」 「私そんなにモテないからそこは気にしなくていいよ」 「どんな物好きがいるかわかんねぇだろ!」 「どこに怒ってんだよ」 笑ったら勝手に涙が出てきた。でも、見られたくないから、私はずっと重なった二人の手を見ていた。 「一緒にどっか行ったりもできないよ」 「一人旅好きだし」 「おい」 たけが旅してるとこなんて見たことないけど。 「嘘だよ、お前のこと監禁できて嬉しいって」 「突然のヤンデレやめろ」 たけが笑った。 「そんなに俺じゃいや?」 「そんなに私がいいの?」 私はやっと顔をあげた。バチッとたけと目が合う。 「お前がいい」 「即答やん」 私はついに声をあげて泣き出した。
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