私が起きるまであと5分

2/3
前へ
/3ページ
次へ
私たちの間に気まずい空気が流れた。 「お前さ、最初病気ってわかったとき、どう思ったの?」 「なんか、嬉しくなかった。病気だわ。私がずっと寝ててもいいって許されたのに、嬉しくないなんて」 「…そっか」 「てかもーほんと、暇!布団あきたー。なんか遊ぶものとか持ってないの?」 「なんだよ、布団との婚約破棄すんのか?」 「婚約してないから」 こいつはまだ言っているのか。思わず笑ってしまった。 「じゃあ俺と婚約するか」 「…なんで?」 私は勢いよくたけの方を向いた。たけはまだ俯いたままで表情はよくわからない。 「俺がしたいから?」 「なんで疑問形?」 「お前が布団を捨てたら他に貰い手いないだろ」 「布団ライバル意識しすぎだろ」 「俺にしとけって」 たけは真剣な顔で私を見つめ、私の手に両手を重ねた。 「本気」 悪い冗談だって言ってくれ。なんだか泣きそうだから。 「本気って書いてマジって読んでもいいよ」 だめだよ、だって私…。 「私ずっと寝たきりだよ」 「俺が会いたいとき自由に会えるじゃん」 「私が会いたいときは無視か」 「お前が俺に会いたくないときなんてないだろ」 たけは自信満々に答えた。 「子供つくれるかわかんないよ」 「ずっと二人でもいいじゃん」 「結婚式とかできないかもよ」 「他のやつに紹介して浮気とかライバル増やしたくないし」 「私そんなにモテないからそこは気にしなくていいよ」 「どんな物好きがいるかわかんねぇだろ!」 「どこに怒ってんだよ」 笑ったら勝手に涙が出てきた。でも、見られたくないから、私はずっと重なった二人の手を見ていた。 「一緒にどっか行ったりもできないよ」 「一人旅好きだし」 「おい」 たけが旅してるとこなんて見たことないけど。 「嘘だよ、お前のこと監禁できて嬉しいって」 「突然のヤンデレやめろ」 たけが笑った。 「そんなに俺じゃいや?」 「そんなに私がいいの?」 私はやっと顔をあげた。バチッとたけと目が合う。 「お前がいい」 「即答やん」 私はついに声をあげて泣き出した。
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加