ミラノ風弱マッチョ

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 あやねの巧みな罠にハマり、ついに思いの丈をぶちまけてしまった梨々子は、もはやわけがわからず赤ら顔で前後不覚だ。誰もが大丈夫か?と思うほどに無言・半笑いで固まった次の瞬間、一心不乱にミラノ風ドリアをもの凄い勢いで食べ始めた。 「ああああンン美味しいなー!やっぱサイゼったらこれだよねー!アハハハー!」  (うつろ)な眼差しの梨々子はドリアを45秒ほどでたいらげ、ピンポンを押しまくる。だがその必要もなく、隣のテーブルを掃除していたアイドル店員厚見さんが、踵を返して駆けつけた。 「お呼びですか?」 「あ、あーしね、これおかわり!おかわりするのー!」 「はい承知しました」  厚見さんは左30度に傾けたエンジェリック・スマイルで注文確認する。 「ミラノ風弱マッチョ、追加ですね!」  …無駄にヒートアップした店内に、この時確かに、一陣の爽やかな風が吹き抜けた…
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