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そのうち梨々子の親友・あやねがいつもの如く痺れを切らす。
「梨々子、決めるの遅っそ!こっちゃ腹減ってんだからさ、彼氏に決めてもらいなよ。ほらピンポン押すよ?」
「あ“?誰が彼氏だっつーの?まいいわ健五、あんた決めてよ。あ、ドリンクバーは全員ね」
梨々子はなんだかんだ健五を信頼している様子だ。
「またかよ…んじゃ僕と同じでいいね」
ピンポーンと健五はテーブルのベルを押す…はずが美しく空振りし、卓上で長い腕がコケて、隣の梨々子とその向かいの筆音の水をひっくり返してしまった。
筆音は梨々子以上のならず者で、世が世ならアフロヘアに剃刀を仕込んでいるような危険人物だ。
「ちょっとぉ!梨々子!そのクッソトロい彼氏なに⁉︎ウゼーんだよ!」
「ご、ごめんね、すぐ拭くから…」
健五はイケメンだが、傍目には梨々子の奴隷にしか見えない。第一印象こそ最高でも、その事実を知ってしまった女子からは例外なく幻滅される不幸を背負っている。
すなわち梨々子のせいなのだが、これがもし、黙っていればモテる彼から女子を遠ざけるための計算だとすれば…なかなかの軍師である。
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