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叫んだのは審判だった。 審判がタイムとは、いったい何事だろう。 そしてまっすぐ僕に向かって突き付けられた太い指。 「ボーク!!!」 騒がしかった声援がピタリと消えた。 まるで球場の時間が止まったかのように。 何が起きたのか理解できないまま、続いて3塁ランナーに向かってホームへ走るように促す腕の動き。 その指の先を視線で追えば、戸惑いながらもホームに戻るサヨナラの1点。 「ゲームセット」 どうして試合が終わってしまったのか、まるで理解ができない。 突き刺さる夏のせいで、無意識の中で試合が進んだのだろうか。 セカンドの白石も、ショートの宮本も僕の前を過ぎ去って皆が整列するホームへ向かう。 ぼうっと土埃が空を舞う様子を眺めていると、センターの真中まで僕の前を通り過ぎる。 サイレンが鳴り響くなか、キャッチャーの野口が動けない僕を迎えに、マウンドまでやってきた。 ただ何も言わず、肩に手を添えてゆっくりとホームまで僕を導く。 なにか耳元で言われた気がしたが、もはやなにも聞こえない。 何が起きたかわからないまま、気づけば家にいてチームメイトからのメッセージが次々と入る。 家族もただひたすらに僕をねぎらうばかりで、何も言わない。 ただ、これだけが分かった。 最悪の結果で、夏が終わったのだと。
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