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地面に滴り落ちるのが汗なのか、半開きになってしまった口から垂れる唾液なのかもわからなくなるほど、激しい投手戦で迎えたのは15回裏。 点数は2対2で同点。 真夏の頂点に君臨する日差しは、肌に突き刺さる痛みを伴うも僕がこれを抑えなければ、夏が終わってしまう。 それなのに、左右の視界にうっすら入るランナー。 そして、真後ろにもランナーの息遣いが感じられる。 場は最悪だ。 延長のあげく満塁同点で迎えた守り。 表に1点でも奪えていたら、少しは楽になっただろう。 でも、今は相手ピッチャーの気持ちがよくわかる。 高校球児ならば誰でも憧れる舞台にやっと立てたというのに、投げ出したくなるほど底のしれない重圧が待っているなんて思っても見なかった。 だめだ、浴び続けた日差しに頭が回らない。 いくら肩で息をして、どれだけ意識を失いそうになっても投げるのは僕しかいないのだ。 このバッターに打たれてしまえば、高校の3年間に捧げたすべての終わりが待っている。 「はあ、はあ……」 どうにか意識を集中させて、朧げになる視界に向けて姿勢を正す。 ずっとバッテリーを組んできた野口に向かって頷き、バッターと主審の鋭い瞳をすっと見据えた。 ボールを構え、グローブにセット。 さあ、と投球フォームに移る。 「タイム!!」
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