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「善は急げってね。近いからすぐ来ると思う」
彼はそのまま電話をかけ始める。
「おう、芳之。今暇か? …じゃ、今から出て来いよ。バンドやれるギタリスト探しててな……ああ、場所は」
この居酒屋の名前と場所を告げ、一言二言交わすと通話を切る。
「15分くらいで来るって」
「ピザより早いな」
随分とフットワークの軽い男らしい。ギタリストを探していると聞いて、すぐ来ることを決めるくらいだ。今はバンドはやっていないのだろう。好都合だ。
暫く呑みながら雑談をしていると、この個室の引き戸が開く。
「おっはよー! 来たよ!」
明るい声。そちらを見ると、長い髪を綺麗なレッドに染めた、随分と整った顔立ちの男が笑顔で立っている。
顔立ちは綺麗だが、着ているものは伸びたTシャツに、かなり緩そうなジーンズで、やや見すぼらしいのが惜しい。
「来たか。入れ入れ」
タクヤが手招きをすると、タクヤとサキの顔を交互に見比べ、サキににっこりと笑いかける。そして靴を脱いで上がり込み、躊躇なくサキの隣に座る。
「はじめまして! 僕、長崎芳之。お兄さんは?」
明るく屈託のない表情が、彼を年齢より若く感じさせる。
「サキ」
「サキ! はい、握手」
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