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「普通なら俺みたいな野郎どうにかして追い出すか、殺すだろう」
「いえまさか。そんなことしませんよ」
「いやなんでだよ。俺はアイツに会った時点で、死んでてもおかしくない人間だったんだぞ?なのに恋人にするって、どんな展開だよ。意味わからん」
「私は素晴らしっ……じゃなかった。別にそれでもいいと思いますが?」
「あのなぁ……テメェも本くらい読んだことあるだろ?物語に出てくる悪党てぇのは、大体死ぬか、捕まるか、そのまま消息不明かってのがオチなんだよ。要は主人公の引き立て役だ。ならせめて、あの英雄様が恋人にするってんなら、あの時助けた亜人の餓鬼だろ?なんで俺だ?意味わかんねぇし。アイツの考えも分からん」
「ガウス様のおっしゃる事は分かりますが、ここは本の世界ではありませんよ」
メアリーはクスリと笑った。
「ここは現実です。ガウス様にはガウス様の人生があって、きっと悪人になるまでの物語だってあったはずです」
ゆっくりと近づいてきたメアリーは、ガウスの胸に優しく手を当てた。
「ガウス様が人や亜人を信用できない気持ちは、私にもなんとなく分かります。でも、この世の中悪い人ばかりじゃないですよ」
「は?テメェなに言って……」
「私だって、目を見れば分かりますよ」
「ッ!……」
まるで自分の全てを見透かされている様な気がして、ガウスはメアリーから視線を逸らす。
人や亜人は信用できない。いや、この世界の奴等は全員信用してはいけない。みんな敵だ。信じれるのは自分だけ。そうやってガウスは生きてきた。
だからこそ、自分の商売を邪魔した挙句。拉致して「恋人になりたい」なんて言ってくるグレイスを信用できないでいた。
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