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「俺は……いつか捨てられるなら、奴隷にされるくらいなら、一人でいい。誰の手も借りねぇし、誰のものにもならねぇよ」 ガウスの頭の中で、昔家族だった男女の姿と、唯一逆らう事が出来なかった男の不敵な微笑みが、悪夢のように思い出される。 またあの時の憎しみを、苦しさを味わうくらいならーー。 「俺はなにも変わらない。ただの悪党だ」 「……そうですか」 ガウスの様子に、これ以上色々言うのは野暮だと思ったメアリーは、部屋を出ていこうとドアノブに手をかけるが。 その前に扉が勢いよく開き。一人の男がズカズカと足を踏み入れてきた。 「よぉーー!!俺が会いに来たぞグレイス!!寂しかった……か?」 真っ赤な髪に真っ赤なジャケットを羽織った体格のいい男は、グレイスと同じように剣を背中に差しており。自身の強さと威厳を主張していた。 「コイツ……」 そのあまりにも目立つ風貌に、ガウス聞き覚えがあった。 「そうだコイツは……あの野郎と同じ」 「なんだ?誰だお前は?ここはグレイスの寝室のはずだが?」 警戒心を高める男に対し、メアリーは即座にガウスを隠すように前に立つと、深々と頭を下げた。 「失礼しました。そしていらっしゃいませ。ロイド・アルフェルト様」 ロイド・アルフェルト。 グレイスと共に魔獣を倒した、もう一人の英雄である。
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