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「それで?誰だコイツは。見るからにして悪そうな野郎だが?」
あれからメアリーとロックによって食堂へと案内されたロイドとガウスは、最悪な空気の中、二人で夕食を共にしていた。
(クソッ。なんでこんな時に限って、アイツはいねぇんだよ)
白いお皿に盛りつけられたローストビーフをフォークで刺しては、ガツガツと口の中へ入れるガウス。その気品のない食べ方に、ロイドは冷ややかな眼差しをむけていた。
「なぁお前。名前はなんて言うんだ」
ロイドからの唐突な問いかけに、神経をとがらせていた二人の視線がぶつかる。
「…………ガウス」
「ガウス?もしかしてお前……奴隷商人の」
「あぁ?なんだ知ってんのか?俺の事」
「当たり前だ!!」
バンッ!!とテーブルを叩き、ロイドは怒りをあらわにする。
「亜人や子供をさらい、奴隷として売りつけている最低最悪な男。お前は街でも要注意人物として扱われている!!あの男のお気に入りだとな!!」
「っ……」
『あの男』と聞いた途端。
ガウスは、ローストビーフにフォークを突き立てたまま固まってしまった。
(あの男のお気に入り……嬉しくない称号だ)
じわじわと足元から這いよってくるどす黒い恐怖に、ごくりと息を飲み込む。
(そうだ……もしも……もしもこの状況がボスに知れたら……俺は一体、どうなってしまうんだろうか)
「すぅーー……はぁ」
考えたくもない光景ばかりが、ガウスの頭の中で流れていく。
ーー怖い。
ーー考えたくない。
ーー逃げたい。
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