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エルステッド家に生まれた少年は、剣士として優秀な父と、強力な魔力を持った母の血を受け継ぎ。街を守る優秀な剣士か魔法部隊になるはずだった。
しかし少年には、剣士としての才能は無く。それどころか魔力さえも全く持たずして生まれてしまった。
「どうして……俺達の子供なのに」
「こんなの有り得ないわ」
優秀な両親。
なのに、一般市民よりも劣っていた二人の子供。
期待を膨らませていた周りの人達からは幻滅され、二人は絶望と行き場のない悲しみに毎日悔やんでいた。
そんな両親を見て、一番悔やんでいたのは少年の方だとも知らずに……。
「お父様、お母様。俺、頑張ります。周りから馬鹿にされないようになるまで頑張ります。だから……そんな顔しないでください」
少年は努力した。
無い魔力はどうしようもないが、そのかわり剣や弓や体術を極めようと毎日特訓した。
少しでも両親を悲しませないために、自分が強くなるために。
しかし。そんなのはただの自己満足だったのだと、少年は思い知らされる。
「お前はもういらない」
「貴方なんか、私達の子供じゃないわ!」
十歳の誕生日。
少年は両親の手で、森の中へと捨てられた。
魔獣が彷徨う危険な森の中で、少年はただ一人、森を抜けるために歩き回り。生き抜くために虫や小魚を取っては食べ、川の水を飲んだ。
それでも身体は次第に弱っていき。足の力は無くなって、歩くことも困難になっていく。
もはや、死んだほうが楽かもしれない。
それでも少年は、次第に募り続けた憎しみと怒りを糧に、ひたすら生き抜いた。
いずれこの手で両親を殺す。その目的を果たすために。
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