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「でも、お前には無理だろ?」
「えっ……」
「だから、俺が殺しておいてあげたぜ」
少年の目の前に置かれる二つの首。
「まさか……本当にあの二人を」
街でも有名なほど強いはずの両親が、一人の男の手によって呆気なく殺された。
「どうだ?お前の望みを叶えてやったぞ?」
男が咥える煙草の煙が、少年の顔に吹きかけられる。
「これでお前も、立派な悪党だな」
「お、れは……殺してない」
「なにを言ってるんだ?お前の中にも殺意は確かにあったはずだろ?そして、死んだ両親の亡骸を見て、少しでもスカッとしてんなら……お前はもう立派な悪党さ」
何も言い返さなかった少年の目には涙が溢れていたが、口元は確かに笑っていた。
悲しさの中に、確かに喜びもあったからだ。
「言っておくが。一度悪に染まったら、もう元の明るい場所に戻れると思うなよ餓鬼。お前は一生俺の奴隷だ」
男の言葉の鎖に繋がれた少年は、闇の中へと落ちていった。
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