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「熱なんてどうでもいいだろうがァ!!俺に構うんじゃねえ!!大体テメェのせいでもあるんだぞ!!テメェが俺なんかを恋人にするんなんてふざけたことをぬかしやがるから、他の奴等から目の敵にされるんだろうが!!」
はぁはぁと肩を上下させ、息を荒げるガウスに、グレイスは瞬きもせず見つめる。
「ひ、ヒヒッ、ヒッハハハ!!いやぁ悪い悪い!!目の敵にされていたのは最初からだっわ。なにせ俺はボスのお気に入りで、奴隷商人だからなぁ。テメェ等英雄様からしちゃぁ、害悪そのものだろ?」
ニタニタと笑って煽りたてるガウスだが、次第に足元はふらつき。視界はぼんやりしていた。
「なぁ英雄グレイス・ユージニス様よぉ。テメェは一体何がしてぇんだ?俺を生かして何の得がある。俺をどうしたいんだ。俺と……どうなりてぇんだ」
精一杯の叫びの後、ふらつきながら倒れそうになるガウスに、グレイスは肩を掴んで自分の胸の中へ抱き寄せた。
「僕は貴方に、僕を好きになってもらいたいだけです」
密着した胸から、大きな鼓動がガウスに直接伝わっていく。
グレイスの気持ちに、ずっと嘘はなかった。
「……はっ。結局それかよ」
「はい。僕は貴方がいいんです」
「はぁ……意味わかんねぇ」
叫んだ反動で身体が限界を迎えたのか、大人しくなったガウスをグレイスは優しくベットに寝かし。冷たいタオルを額へ置いて、頬を撫でた。
「貴方が悪人でも、僕だけはずっと貴方の味方です」
「……俺の、味方?」
「はい。ずっと側にいます。貴方を一人になんてさせません」
「なんで……テメェは、そこまで」
「ガウスさんが、好きだからです」
少し汗ばんだ手を握って、真剣な眼差しで告白するグレイスに、きっと普段のガウスなら呆れた顔で「はいはい」と軽く受け流していただろう。
けれど今のガウスは、その告白にどこか気持ちが救われた気がした。
ずっとぽっかり開いていた穴に、少しずつ何かが入ってきて、じわじわと満たされていくような、安心するような……そんな感情がジワジワと湧き上がってきて、ガウスは思わず緩みそうになった口元を慌てて手で押さえた。
(俺は……コイツの言葉が、コイツの気持ちが、嬉しいと思ったのか?)
相手は男で、自分とは相いれない存在だというのにーー。
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