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人々が寝静まった夜の街で男が一人、酒に溺れていた。 「なんでだ。なんであんな奴に、俺のグレイスがっ」 野良猫の一匹もいない路地の階段で座り込み、英雄ロイド・アルフェルトは酒瓶片手に泣きじゃくる。 自分の武器である剣さえも放り投げ、受け入れたくない現実を忘れたい一心でひたすら酒を飲んでいた。 「どうすれば……どうすればいいんだ」 グレイスを好きな気持ちだけは忘れられない。諦められない。 だがグレイスは、自分をそういう対象として好きになってくれる事はないだろう。 それどころか、もう相棒としても見てもらえないかもしれない。 あの、悪人ガウスのせいで。 「どんなことをしてでもアイツを……あのガウスとかいうクズ男を、グレイスから引きはがさないと……」 「それならこのワタクシが、お手伝いいたしましょうか?」 突然目の前に現れた長身の男に、ロイドは一瞬で酔いが覚める。 「な、んだ……」 青い髪に真っ白な顔、目の下には青い涙の様なマークが描かれた、まるでピエロの様な男が、軽く頭を下げてニコニコ笑っていた。 もしかすると、本当にどっかのサーカス団のピエロなのかもしれないが。それでもこんな夜中にこんな場所を一人で歩いていたとなると、流石のロイドも不信感を感じ。咄嗟に剣を握ろうとするが、放り投げたせいで手元にはなく。しかも酒のせいで足元がおぼつかない状態だった。 それでも、自分の威厳を見せつけるべく。ロイドは男を睨みつける。 「誰だ貴様は」 「あはは!!そこまで警戒しないでくださいな。ワタクシは、貴方様に協力したいだけですから」 「……なにが目的だ」 「ふむぅ……目的ですか。まぁしいて言うなら……貴方様が大嫌いなガウスとかいう奴隷商人ですよ」 男はロイドに落ちていた剣を渡すと、ニヤリと口角を上げて笑っていた。
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