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「はぁ……やっぱりな」
元から目立つ顔つきにあの服装で街へ出れば、絶対こうなると予想していたガウスは、仕方なくそのへんの壁にもたれかかって、グレイスが来るのを待つことにした。
「チッ……なんで俺がアイツを待たなきゃいけねぇんだ」
ブツブツ文句を言いながら待つこと二十分後。ようやく野次馬を抜けて戻ってきたグレイスだったが、そこから店を渡るたび声を掛けられ、結局同じことを何度も繰り返していった。
これでは、もはやデートどころではない。
「すみませんガウスさん……僕のせいで」
「あ?別に気にしてねぇし。俺は外にさえ出られりゃあそれでよかったしな」
といいつつも、内心ムカムカしていた自分を誤魔化すように、ガウスは平然を装っていた。
グレイスは街を救った英雄だ。
老若男女人種問わず、皆から好かれているのは元から分かっていた事。
それなのに、女性からキャーキャー言われて、あちこち触られて、それでも嫌な顔一つせず優しく微笑むグレイスの姿に、ガウスの心はざわついていた。
(これじゃまるで、俺が嫉妬してるみたいじゃねぇか)
「いやいや違う違う違う。絶対に違う」
「ど、どうかしましたか?」
「べ、別になんでもねぇ!!」
右手で頭を抑え、ガウスは考える。
(そうだ。俺は単に、女にキャーキャー言われていい思いしてるアイツにムカついてるだけだ。俺だって、久々女捕まえて遊びてぇつうのにアイツばっかいい思いしやがって……。クソ羨ましい。イケメン爆ぜろ)
そう思っている間にも、またもや女性陣から絡まれていたグレイスに、ガウスのイライラはどんどん増していく。
(つうかアイツは、俺とデートがしたかったんじゃねぇのか?ならこうなることくらい予想できるはずだろ?なんでなんの対策もしてこねぇんだ)
待たされてから十分経ったが、どんどん新たに増えだす野次馬に、グレイスは嫌な顔せず。一人一人対応する。
(なにやってんだ……この俺が待ってやってんのに、どうしてアイツは戻ってこねぇんだ。そんな奴等適当に相手して、さっさとこっちに来いよ)
視線すら合わないグレイスを、離れたところから見ている事しか出来ないガウス。
まるで自分だけが取り残されてしまったような……昔みたいに「いらない」と、捨てられてしまったかのような感覚が甦る。
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