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「クソッ!!」 嫌な記憶がガウスの気分を害していく。 「もう知るか!!」 鬱憤は限界を超え。ガウスはそのまま一人、グレイスを置いて歩きだしてしまった。 それに気づいたグレイスは、すぐにガウスを追いかけようとするが、野次馬に立ち塞がられて動けない。 「ガウスさん!!ガウスさん!!」 必死に名前を呼ぶグレイスだが、ガウスは聞く耳を持たず。そのままグレイスの視界から外れるように逃げ出してしまった。 「クソッ。こんなところで名前を連呼するんじゃねぇよ。あの野郎」 目的もなく、ガウスはひたすら早足で街を歩く。 そういえば、こうして自由になるのは久しぶりだった。 指輪のせいでずっと屋敷の敷地以外からは出られず、グレイスが仕事の時以外はほとんど鬱陶しいくらい絡まれていたせいで、一人になる時なんてほとんどなかった。 「そうだ……今なら逃げ出せるじゃねぇか?」 もっと早く気付くべきだったことに今気が付いたガウスは、はめている指輪を確かめた。 「さっきからアイツの近くにいねぇのに引き戻されてねぇし……。このままアイツの目の届かねぇとこまで逃げちまえば、もうあそこには戻らなくて済むんじゃねぇか?」 それはまさに、ガウスがずっと求めていた事。 グレイスの屋敷から脱出する。 そしてもう一度ボスの元に戻って、手下を連れて今度こそグレイスを……。 「…………んだよ、この変にモヤモヤした感じは」 ずっと、そうしたかったはずなのに。 ガウスの心は、迷っていた。 「俺は……あそこに居たいのか?」 俺を、普通に客人として扱う変なメイドと執事がいるあの屋敷に。 「アイツと……居たいっていうのか?」 俺を好きだとかいう、イカれた英雄の側に。
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