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「そんなの駄目だよ」 「僕達を売ったくせに」 「貴方だけ幸せになるなんて」 「許さない」 幼い声が、ガウスに向けて飛び交う。 「なっ、なんだテメェ等……」 いつの間にかガウスの周りには、ボロボロの黒い布を纏った子供達が、道を塞ぐように囲っていた。 手首には太い手錠がしてあり。靴すら履いていない足やガリガリの細い腕には、汚れと傷跡があちこち残っていた。 薄汚れた姿と、自分を見つめる憎しみと絶望に満ちた眼。 一人一人の顔は覚えていなくても、ガウスには自分を囲む子供達が何者なのかすぐに分かってしまった。 「なんでテメェ等がここに……」 檻に閉じ込められているはずの奴隷達が、こんな街中に出て来れるはずがない。 それなのに子供達は、まるで『自分がここに来ることを、事前に知っていた』かのように集まっている。 (どうやって……) 「ねぇ、なにあれ?」 「どうしたの?」 「なになに?」 その異様な光景は、次第に街の人達の目にも留まっていく。 それが子供達の狙いだと気づいた時には、既に手遅れだった。
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