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「誰か助けて!!」
「僕達、この人に攫われて売られちゃう!!」
「痛いのはやだよ……誰かぁ」
子供達は街の人達に訴えかけるように大声で叫び出し。繋がれた手錠を見せながら、ボロボロと涙を流した。
俺が悪人だと、周りに見せつけるために。
「うそっ。本当に?」
「君達、早くこっちへおいで!!」
「もしかしてあの人が?そういえば、ずっと顔も隠してるし……」
「誰か早く、剣士か魔導士を呼んで来い!!」
(これは……流石にマズいな)
騒ぎになり始める周りに危機感を感じたガウスは、すぐに走り出し。街の人達を押しのけ、目立たない場所へ避難しようとするが。
見覚えのある赤い男が、道を塞いだ。
「また会ったな。ガウス」
「ッ!!」
逃げ道を塞がれて立ち止まったガウスに、鋭い何かが頭上を切り裂き。気付いた時には、ガウスの被っていたフードは切られてしまっていた。
「これで逃げも隠れも出来ないな?ガウス」
「クソッ……またテメェか。ロイド・アルフェルト」
剣を鞘へ納め、ガウスに向かって笑みを浮かべるロイド。
まるで『全てが計画通り』と言わんばかりの余裕の顔に、ガウスは冷や汗を流す。
「おい見ろ!!ロイド様が来てくださったぞ!!」
「キャーー!!ロイド様ーー!!」
「そんな奴倒しちゃってください!!」
まさに悪を倒すために現れた正義のヒーローの登場に、野次馬達は歓喜の声を上げていた。
前回戦った時とは違う。
今回は逃げ場がないどころか、公開処刑だ。
「さぁ来い悪党。この俺がお前を斬る!!」
「ッ……クソッ」
念のため腰に短剣は忍ばせていたガウスだが、前回の戦いで勝ち目がない事は目に見えている。
しかし野次馬達がいるせいで逃げることも出来なければ、味方になってくれるメアリーもロックもいない。
(どうする……)
その時。
ふと、グレイスの顔が浮かんだ。
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