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(アイツなら、この状況を見ればすぐに来てくれるかもしれない……だがそれは、アイツにとっても……) 「来ないのなら、俺から行かせてもらう」 「ッ!!」 まるで風を切るような速さで剣を引き抜き刃を振り下ろすロイド。だが、ギリギリのところで短剣を引き抜いたガウスは、なんとか刃を受け止めた。 しかし力量差は歴然。 上から押し込まれていくガウスは必死に両手で剣を抑えるが、それでもどんどん片足は崩れていき、今にも押し倒される寸前だった。 (ここで倒れれば……刺されて終わりだ) 「諦めろガウス。お前の悪事はここまでだ」 「グッ、ウッ」 「やっちゃえーー!!」 「頑張ってロイド様ーー!!」 ロイドの勝利を確信した野次馬達からは歓声が上がり、盛り上がりを見せていた。 だがその瞬間。全身の肌を凍り付かせるような冷気と共に、ロイドの剣がどんどん凍り付いていき。周りは、何が起きたのか理解できず一瞬にして静まり返ってしまった。 しかし、それが誰の仕業なのか。ロイドとガウスだけはすぐに予想が出来た。 「やっぱりお前は、この男を助けに来るんだな。グレイス」 「ロイド・アルフェルト。僕はもう貴方を許しませんよ」 剣を片手にロイドの背後から現れたグレイスに、周りはざわつき始める。 「え?グレイス様?」 「ねぇ……まさかロイド様の剣を凍らせたのって、グレイス様なの?」 「え……でもなんで?」 街の人達が動揺するのも仕方ないことだろう。本来英雄であるグレイスなら、寧ろロイドと共にガウスを討つのが普通の対応だ。 それなのに……グレイスはガウスを助けるようにロイドを攻撃した。 正義とは言えない行いは、街の人達を疑念から次第に不信へと変えていく。 そうなることをガウスは予想していて、そして一番恐れていた。
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