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「ッ!!……テメェは……」 自分と同じように、男の目の下には『ボスのお気に入り』である証拠の印が描かれている。 ということは、自分を取り囲んだ奴隷の子供をここに用意したのはこの男だろう。ロイドがタイミングよく現れたのだって、偶然とは思えない。 全てはこの男の手のひらで踊らされていたことに気付いたガウスは、あまりの腹立たしさに殴りかかろうとするが。その手はあっさりと受け止められてしまう。 「まぁまぁ落ち着きなさいよ。そんなんだから英雄様にもあっさり捕まるんですよ」 「うるせぇ。何者だテメェは」 「クッ、ハハハ!!何者って!!まぁ、しいて言えば……ボスの秘書官みたいなものですかねぇ?」 「秘書官って、まさか……」 「お初にお目にかかります。ワタクシ、ボスの秘書官をさせてもらっておりますドールと申します。本日はボスの命令により、ガウス君をお迎えに上がりましたぁ」 右足を引き、右手を体に添えて、ボウ・アンド・スクレープのお辞儀をするドール。しかしその丁寧な対応に対して、口元はガウスを見下すように冷笑していた。 「クッ……ククッ。アハハハ!!いやぁ~~それにしても傑作ですねぇ。まさか君みたいなお人が、あんな善人に施しを受けているとは」 「あ?ぶっ殺されてぇのかテメェ」 「だって本当のことでしょう?君は、あの英雄様に今まで貰えなかった愛を無償で貰っている」 「それは……アイツが勝手に」 「でも、君はその愛を受け取っているでしょう?アハハ!!まぁそりゃそうですよねぇ?愛されるのはとても心地よいですから……今まで愛を貰った事が無い君なら特に」 「そ……れは」 だんだん言葉が途切れていくガウスに対し、ドールは流暢に話す。 「愛を貰えば貰うほど、人というのはどんどん我が儘になっていくものです。もっと自分だけを見てほしい。触れてほしい。笑って欲しい。話してほしい……と。ねぇガウス君、君もそうだったでしょう?」 ガウスは何も言えなかった。 女性に囲まれて、嫌な顔せずニコニコ微笑んでいたグレイスに、そう思ってしまっていたからだ。 「俺は……」 いつしかガウスは、グレイスの好意をもっと欲しいと感じてしまっていた。あんなに嫌だったものが、今では喜びに変わってしまっていたのだ。 「俺は……アイツのことを」 「まぁでも、これで目が覚めたでしょう?君とあの英雄様じゃあ住む世界が違うんですよ」 顔を覗き込むように近づいてはニヤニヤと笑うドールに対し。もはやガウスは、言い返す言葉も出なかった。
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