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住む世界が違う。 そんなのは最初から分かっていたはずだった。 けれど。毎日のように絡んできては、自分を好きだと言ってくれるグレイスに悪い気がしなくなっていて、どんな事があっても必ず自分を助けてくれたグレイスに対し、いつしか特別な感情を抱くようになっていた。 「ガウス君。君が少なからずあの英雄様に好意を抱いているというなら、ここで手を引いた方がいいと思いますよぉ?でないと……きっと彼は英雄でいられなくなる」 ガウスの耳元で、悪魔の声が囁く。 「さぁガウス君。ワタクシの言う通りにするのです。そうすれば……彼だけでも助かりますよ」 ドールはガウスの手を取ると、短剣を握らせ、命令を下した。 「英雄様を刺しなさい」 ドールの命令に、ガウスは下を向いたまま歪んだ笑みを頬に浮かべた。 「ヒッヒャハハハ!!!!」 高らかな笑い声が響き。周りの視線は、英雄二人からガウスへとうつった。 (俺は一体、何を勘違いしてたんだろうな) 悪党が正義のヒーローを独占できるわけがない。そんなの最初から分かっていたはずだった。 それなのに好きとか嫌いとか、馬鹿らしい。気持ち悪い。 今まで平気で奴隷を売りさばいていた頃を思い出すと、ガウスは今の自分がおかしくておかしくて仕方なかった。 短剣を手にして走り出すガウス。 それに気づいたロイドは、自分がやられると思い即座に避けるが。短剣の刃はロイドを完全に無視し、逃げる素振りもしなかったグレイスの腹部へ突き刺さった。
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