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「ッーーウッ……」
「グレイス!!」
刺した剣を引き抜くと、グレイスは痛みをこらえるように腹を抑えながらその場で倒れ込んでしまった。
傷口からはどんどん血が流れだし、地面は鮮血で赤く染まっていく。
「アハハハ!!馬鹿だよなぁ英雄様は!!俺に騙されるとも知らず、正義感ぶって助けに来るなんて、とんだ間抜け野郎だなぁ!!」
ガウスは周りに聞こえるように、大声でグレイスを罵った。
街の人達に、グレイスはただガウスに騙されていただけだと言い聞かせるために。
その光景を目の当たりにした野次馬達は悲鳴を上げながら逃げまどい、ロイドはぐったりとしていたグレイスを抱き起こしてひたすら名前を呼び続けていた。
役目を終えたガウスは、自分の手が小さく震えていたことに気付く。
「……はっ、こんなことで」
ガウスが人を刺したのは初めてではなかった。今まで何人もの人達を傷つけ、陥れてきた。それに対して後悔も罪悪感も全く感じて来なかった。
それなのにーー。
血を流すグレイスを見つめながら、ガウスは自分の罪の重さに押しつぶされていた。
「おやおや。人を刺したくらいで震えてるんですかぁ?情けないですねぇ~~」
「……アイツは……どうなる」
「さぁ?ワタクシの知ったことではありませんよ。このまま死ぬか、幸いにも生き残るか……そのどちからでしょう」
グレイスに全く興味がないドールは素っ気なく答えると、震えるガウスの手を取って、急かすように引っ張る。
「そろそろ逃げないと、面倒な事になりますよ。ガウスさん」
「…………あぁ」
ガウスはグレイスからドールの方へ視線を変え、そのままその場から逃げ出すように走り去った。
「待て!!ガウス!!」
ロイドの怒鳴り声が聞こえるが、グレイスを置いてまで追ってくることはないだろうと分かっていたガウスとドールはそのまま後ろを振り向くことなく走り続ける。
(これで良い……あぁ、これで良かったんだ。俺はアイツの側にいていい人間じゃねぇ……俺は死ぬまで悪党なんだから)
今まで犯してきた自分の罪を思い出しながら、ガウスは笑い。同時に涙を流した。
片隅に残ってしまった後悔と、確かに満たされていたあの場所にもう戻れない寂しさに胸を掻きむしられながら、ボロボロと涙をこぼしていた。
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