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「なっ……んで」
「残念。俺がいる限り、その力は使えねぇぞ」
次第に消えていく煙。
ロイドの先には、銃口を向けるボスと、そのボスの腕で首を絞められ身動きが取れない状態になっていたガウスの姿があった。
「くそっ」
ガウスはボスの手の中にあり、自分は怪我をしている。しかも魔力は何故か使えない。この状況にロイドは次第に焦りを感じていた。
「おいおいどうしたぁ?俺からコイツを奪うんじゃなかったのかよ」
「っ……お前は、魔力を消す力でもあるのか」
「なんだぁ?今頃気が付いたのか?」
呆れたように溜息を吐くボスに対し、ロイドは驚きを隠せずにいた。
「本当にそんな力が……」
「っていっても、そんな大したもんじゃないさ。どうせ俺の力は相手の魔力を無効にするだけもの……自分自身が強くなるわけじゃねぇ。いわばコイツ等と変わらねぇってわけだ」
コイツ等というのは、ガウスとドールの事らしく。ボスはガウスの首を絞めながらも、愛しい眼差しを向けていた。
「俺は、俺の様な可哀想な境遇にあってきたコイツ等を愛している。ガウスもドールも、そしてこの店で売っている奴隷達も」
ボスの言葉にロイドは驚き、一瞬目を丸くするが。すぐにまた目を細め、敵意を向ける。
「愛しているだと?」
「あぁそうだ。ここにいる奴等は皆、差別を受け家族から捨てられた奴等ばかりだ。そんな奴等を愛してあげられるのは、気持ちが理解できる俺の様な人間だけだ。だから俺は、俺だけは愛してやるのさ。可哀想なコイツ等を」
「滅茶苦茶な奴だ。愛しているのに奴隷として売ったり、首を絞め上げたり……本当に愛しているのならそんなことしない」
「ガウスを締め上げているのは、コイツが俺から逃げようとするからだ。見ろ。ちゃんと死なないようにはしてるだろ?」
確かに右腕でがっしりと首を抑え付けられてはいるが、ガウスにはまだ抵抗しようとする力はある。これがもっと本気で締め上げられれば、息が出来ずそのまま死んでしまうだろう。
「それに。奴隷達を売ってるのも勿論愛あっての行動だ。あの檻の中にいる餓鬼共は皆、既に家族から捨てられた奴等しかいない。働くことも出来ない餓鬼が一人で、魔力も持たずこの街で生きていけると思うか?無理だろ?ならいっそ奴隷として、どっかの家に引き取られた方が生きていける。そうだろ?」
ロイドは、ボスの考えに全く理解できないわけではなかった。
家族から捨てられ、魔力も持たない亜人や人間の子供が、未だ不平等なこの世の中で生きていくには難しいだろう。
そういった理由で死んでいった子供達を、ロイドも何人も見てきた。
でも、それでも。
ロイドには、ボスのやり方が正しいとは到底思えなかった。
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