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「な、んだ……ここは」
呆気にとられているガウスの上で、グレイスが首をかしげて答える。
「なにって、僕の家ですよ?」
「い、家!?は!?」
「あ、間違えました『僕達の』家でしたね」
「いや、そう言う事じゃなくて。ってオイ!!」
ガウスを下ろすことなく、グレイスはそのまま屋敷の中へと入っていった。
扉を開けると、まず目の前には二階へ続く長い階段ホールがあり、天井にはシャンデリア、壁には花や誰かの家族写真が飾られていた。床は大理石で出来ていて、埃一つ無い。まるで絵本の中の王子様が住んでいるかのような家に、ガウスは息を漏らした。
「おかえりなさいませ。グレイス様」
「おかえりなさいませ!」
「ただいまです。メアリーさん、ロックさん」
頭を下げて、グレイスとガウスを出迎えたのは、二人のメイドと執事だった。
メアリーと呼ばれたメイドは、金髪で長い耳の生えたエルフという種族のようで、凛とした顔つきは少し近寄りがたい雰囲気が漂っている。対してロックと呼ばれた執事は、黒髪の幼い顔つきをした青年で、どこかソワソワしている気の弱そうな人間だ。
「お食事とお風呂の準備が出来ておりますが、どうなさいますか?」
「どっちも後でにしておきます。今から僕は、恋人と少しだけ戯れてくるので」
「……かしこまりました」
「オイッ!!戯れるってなんだ!?何する気だ!?」
ようやく我に返ったガウスは、何度も離せと怒鳴りながら手足をバタつかせるが、グレイスはビクともせず。ウキウキ気分で階段を上がっていく。
そして二階の寝室へ着くや否や、真っ白なベットの上にガウスをぽいっと放り投げると、起き上がられる前に馬乗りになって、ガウスの手首を押さえつけた。
「クソッ!!なにしやがる!!」
「大丈夫です。怖がらないでください」
「怖がってねぇわ!!ただ、どういうつもりで俺をこんな場所に連れてきたんだって聞いてんだよ!!」
「どういうつもり……?」
グレイスの透き通るような青い瞳が、焦るガウスの顔を映し出す。
本当は聞かずとも、グレイスが今から自分にどういうつもりで、何をしようとしているのかは理解できていた。
ただそれでも、それは自分の勘違いであってほしいと懇願する気持ちで問いただしたのだが。その願いは叶わなかった。
「僕が知っている恋人というものは、こうしてベットの上で気持ち良い事をして、愛を確かめ合うんですよね?だからほら……僕達も、気持ち良い事しましょう」
そう言って頬を撫でてくるグレイスに、ガウスの背筋が凍り付く。
(コイツは本当に、今から俺と……ヤる気なのか?)
不安げな眼差しと、意地悪な眼差しが互いを見つめ合う。
「大丈夫ですよ。僕がちゃんとリードしてあげます」
焦りと興奮で荒くなっていく二人の息が、ゆっくり重なって交わった。
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