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「では、貴方が僕を好きになってくれるまで頑張ります」
「……は!?」
「僕は貴方に……ガウスさんに、ただのグレイス・ユージニスを好きになってほしいのです」
左手を掴んで、真剣な眼差しを向けてくるグレイスにガウスは困惑する。
「意味……わかんねぇ」
しかしその反面、何とも言えないむずがゆい気持ちが、ガウスの中で波打っていた。
(読めない……この亜人野郎の考えが。何を企んでいるのか分からない。それとも、本当にこんな俺と恋人になりたいと思っているのだろうか?)
誰にも向けられたことがなかった好意、誰にも触れられなかった手の感触、与えられて来なかった優しい言葉。
そういうものに慣れなていなかったガウスは、どんな態度をとればいいのか、何と言い返せばいいのか分からず。視線を逸らしては口をパクパクさせていた。
「お、れは……」
だがその後、指に感じた違和感に、ガウスは正気に戻る。
「……オイ。これはなんだ」
ガウスのゴツイ左手の薬指には、青い指輪が何故かピッタリとはまっていた。
その指輪を見るなり、グレイスは満足げな笑みで、頭部に生えているうさ耳をぴょこぴょこ動かしている。
「予約です!恋人予約」
「はぁ!?勝手にするんじゃねぇ!!つうか、なんでピッタリなんだよ!!」
「因みにそれは、僕の家から離れると強制的にここへ戻る仕組みになってますので、逃げることはできませんよ」
「そういうことかよ!!クソッたれがぁあーー!!」
その後、勿論指輪は外すことが出来ず。何度も逃げ出そうとしたガウスが寝室へ戻されたのは言うまでもない。
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