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城壁に囲まれたフレイム王国は、とても美しい街である。
レンガで作られた武器屋や洋服店、みずみずしい果実が並べられた青果店や美味しい匂いが漂うパン屋など、様々な店が立ち並び。緩やかに流れる透き通った川では、立派な橋がかけられている。街を抜けた先には、緑に彩られた木々や鮮やかな花が沢山咲いていて、小さな生き物達が飛び交っている。
そんなフレイム王国住む人達の中には、亜人やエルフといった人間とはまた違う種族達も一緒に手を取り合って生活していた。
だが、そんな場所でも悪人と言うものは存在する。
「さぁさぁ皆さん。今回の商品はこちら!犬耳亜人の少年と、人間の少女でございます!どちらも魔力は持っていませんので、魔法による攻撃は出来ません。今はすこーーしばかり汚れてはいますが、洗えば容姿は抜群でございます。使い方は皆さまの自由です!さぁさぁどうですかぁ!」
人々が寝静まった夜の街。その裏では、魔力を持たずして生まれた亜人や人間の子供を捕まえ、金持ち達に売りつける奴隷売買が行われていた。
「お買い上げありがとうございま~すぅ~~……ヒヒッ。今日売り上げも上々だな」
一枚一枚お金を数えながらニタニタといやらしい笑みを浮かべる奴隷商人のリーダーガウスは、見た目通りの悪人だった。
癖ッ毛だらけの焦げ茶色の髪に黒い瞳。目の下には、何かの印なのかお洒落なのか、赤いラインがひかれており。右頬には刃物で切られたような大きな傷跡が残っている。
ガウスはボスのお気に入りで、売り上げも一番いいということもあり、手下達を数人従えて店を構えている。女遊びは激しく、プライドも高い。そして金の為ならなんでもする男だ。
「チッ。しかし最近はいい奴隷が手に入らねぇな……。商品も少なってきたしよぉ」
檻に入れられた奴隷達を眺めながら、ガウスは顎に手を当てて悩んでいた。
今は昔よりも亜人と人間の関係は良好してきているため、差別されて捨てられる子供というのは少なってきているのだ。
「さて、どうするか……」
そんな時。悩むガウスの後ろから、外へ出ていた手下の一人が、ある情報を持って戻ってきた。
「ただいま戻りやした兄貴」
「あぁ。どうだった」
「良い情報を手に入れましたぜ。街はずれにある森林で、親に捨てられた亜人が一匹でうろついているのを見たという奴が」
「ほぉ……」
まさにグットタイミングな情報に、ガウスはニヤリと笑みを浮かべた。
「よくやった。早速仕事に出るぞテメェ等!!」
「へい!!」
ガルフの号令に、手下達は無造作に置いていた短剣を腰に差し。ガウスを先頭に、街はずれの森の中へと入っていった。
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