江野川英勝の華麗なレシピ

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「あなた、私これから出るけど、明日までよろしくね」  妻の夏菜子が、心配そうに俺を見上げた。  ここは江野川家の玄関。今日から一泊の予定で、妻の夏菜子が出張に出る事になったのだ。  俺こと江野川英勝と、矢野夏菜子が結婚したのは13年前。すぐに子宝に恵まれ、今では六年生と三年生の男の子と女の子がいる。  夏菜子が泊りの出張に出るのは久しぶりだ。結婚前が最後だから、ほぼ初めてと言ってもいい。日帰りはあっても、泊まりは子供らの事もあってなかなか受けることが出来なかったのだ。  子供らももう聞き分けが出来る年齢だ。一泊くらい、この俺でも何とかなる。 「夕飯は大丈夫? 準備で時間が無くて作れなかったけど。買ってもいいからね」  まだ夏菜子は心配そうだ。 「大丈夫だよ。いざとなったら、出前で美味しいの買うからさ」  夏菜子はまだ心配そうだったが、時計を見上げて慌てて玄関のドアを開けた。 「コウとリナにもお手伝いさせてね。出前は間に合わない時があるから、余裕を持ってね」 「大丈夫だって。もう出ないと、帰宅時間だから混んでるぞ」 「お母さん、頑張って」 「お土産必ず買って来てね」 「そうね、わかった。何かあったら、電話かメールしてね」  名残惜しそうに、我が家のカミさんが扉を閉めた。  18時、これから我が家はフリータイムだ。            
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