遭難

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遭難

 蓮は棒の他に網とかごを持って森に入った。  けもの道を5分も歩くとクヌギが見えてきた。 「虫が沢山あつまってる」  クヌギの樹液が染み出るところに、カミキリ虫、カナブン、カブトムシの雌がいた。 「雄のクワガタ虫、いないな」  蓮は木をみあげる。  クワガタ虫のけはいはない。  ヤブ蚊の不快な羽音がする。 「痒いなぁ」  ふくらはぎや腕を数か所刺された。  蓮はクヌギの木から遠ざかった。 「もっと奥に行ってみよう」   蓮があるきはじめると、ヤブ蚊たちも追いかけてくる。 「あっちいけ!」  網を振り回し蓮は森を駆けた。 「あれ、ここどこ?」   気がつくと蓮は来たこともない場所にいた。  けもの道は見当たらなく、自分がどっから来たのかさえさっぱり分からない。 「やばい」  スッと血の気が引いた。  お祖母ちゃんと何度も来た森なのに。  蓮は斜面を登りだした。 「明るい所に行かなきゃ」  蓮はひたすら歩いた。
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