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洞窟の絵
そのころ蓮は洞窟の中で見たことも無い美しい絵を発見していた。
「こんなところに絵が描かれてる」
絵は鮮やかな色彩で彩られた、踊る天女の姿だった。
「何を演奏してるのかな?」
蓮は目をこらし天女の手に握られた楽器をみた。
「笛だ!天女が踊りながら笛を吹いているんだ!」
天女は透き通る虹色の羽衣を着ていた。
「まるでつい最近描かれたみたいに鮮やかだ」
蓮はその絵に引き込まれた。
ふぁ~。
蓮は急に眠気がさし大きなあくびをした。
♪~
どこからともなく笛の音がした。
「あれ……」
蓮は周囲をみまわしたが誰もいない。
洞窟の水の流れる音だけだ。
「どこかに風の通り穴があるのかも」
眠気も覚め、蓮は立ち上がり先へ進もうとした。
「わたしをここから出して下さい」
今度はハッキリと女の人の声がした。
「誰? どこに居るの?」
周囲に人の気配は無い。
……まさか幽霊。
蓮はこわくなり絵の前から後ずさりした。
「怖がらないで下さい」
よりハッキリと聞き取れた。
「君は誰? どこにいるの? 出てきて!」
蓮はゆっくりかがみ、石ころを握り締めた。
「姿を現すので、石を投げないで下さい」
「う、うん。わかった」
蓮は震えながら後ずさりした。
「あっ」
石につまずいて水の通り道に思いっきり尻もちをついた。
「ごめんね」
ふいに後ろから声がした。
蓮が振り返ると絵の中の天女が微笑んだ。
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