黒大蛇

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黒大蛇

「お姉さん、絵のモデルさん?」 「そうよ」 「なんだ、じゃ、絵描きさんはどこ?」 「今はいないわ」 「じゃ、さっさとここから出ようよ」 「それが出れないの」 「なんで?」 「閉じ込められちゃったから」 「穴を奥へ行けば出口があるんでしょ?」 「あるわ。でもでることが出来ないの」 「意味分かんない」 「出ようとすれば大蛇に邪魔されるから」 「大蛇がいるの!」 「真っ黒な大蛇がいるの」 「それでお姉さん困ってたんだね」 「そうなの」 「蛇なら退治してやるよ」 「たのもしいわ」 「この棒で叩くんだ」  蓮はお祖母ちゃんに貰った棒を見せた。 「あ、それは!」  天女の瞳が大きく輝いた。 「この棒がどうしたの?」 「その棒は十束剣を使って作られた魔法の棒よ」 「十束剣って?」 「こんど教えてあげる」 「チェ、つまんない」 「君ならきっと勝てるわ」 「あたりまえだよ」 「大蛇が来る前にわたしを自由にして欲しいの」 「今でも自由じゃん!」 「あたしはミサ、あなたは?」 「蓮だよ」 「蓮ちゃん、あたしの手を握ってみて」 「え」  蓮がミサの手を握ろうとすると、幽霊のように触れることが出来ない。 「ミサ姉ちゃん……」 「あたしホログラムようなものなの」 「じゃ、死んだ人?」 「違うわ。あの絵の中にいるからよ」 「どうしたら出られるの?」 「その棒であの絵の6個の星を潰して欲しいの」 「わかったよ」  蓮は立ち上がり絵の前に立った。 「ここと、ここと、ここと……」  ミサは絵を取り囲むように描かれた六つの星を指でおさえた。 「わかったけど、どうやればいいの?」 「棒の先で触れるだけでいいわ」  その時、何かが近づく音がした。 「大蛇よ! 急いで!」 「うん」  蓮は星を右上から順に棒の先で触れた。  最後の一つに触れると、絵が目も眩むほど輝いてミサが姿を現した。 「蓮くん、ありがとう」  蓮はミサにぎゅうと抱き締められた。 「逃げられるとでも思っているのか」  背後から悪魔のような太い声がした。  振り向くと頭が8個有る巨大な黒大蛇が今にも襲いかかろうとしていた。 「わぁー!」  蓮は腰を抜かすほどびっくりした。 「この子に手を出したら私が許しません!」  ミサが蓮をかばうように立つ。  蓮は怖くてミサの腰にしがみついている。 「ならばお前から先に食べてやる」  黒大蛇は頭を振り上げミサに襲いかかった。
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