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第1話
彼と初めて出会ったのは…ううん、初めて会話したのは新学期が始まったばかりの、ある朝。学校の玄関だった。
その日は雨で、私は少し寝坊してしまった。趣味に没頭して夜更かししたせいというのもあるけれど。
「おはよう!」
飽和状態の傘立てに無理矢理ねじ込み、急いで靴を脱いでいると後ろから突然声がした。
振り返ると一人の男子生徒がこちらを見下ろしている。
わ、私に言ってるの!?
立ち上がりキョロキョロと見回しても、既にがらんとした靴箱には彼と私しかいない。
「お、おはよう、ございます…?」
「ハハッ、何で敬語?てか、時間ヤバいな!」
クシャっと軽く笑った彼は、雨の日に似つかわしくないくらい爽やかで、私はつい惚けて見つめてしまった。
と、目の覚めるような予鈴のチャイムが二人の間に響き渡る。
お互い時間が動き出したかのようにバタバタと教室に向かう。
何となく彼の後ろをついていく成り行きが気恥ずかしくて、下ばかり見ていた気がする。
「おう、遅刻だぞー神成!ん?天野もか。早く席に着けー」
担任の先生の声に、教室中の視線がこちらに向いた。
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