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中には“Error”の人もいるが、正直この能力に目覚めた当時は何の時間を表しているのか全くわからなかった。
時間はあまりにもバラつきがあるため、最初はその人が死ぬまでの時間かと思ったけれど違った。高校二年になった今ならその時間を説明できる。
「好きな人って、昨日デートするって言っていた他校の男子?」
「静かに!声が大きいから…!」
いつもは大口を開けて笑う千秋だが、今の彼女はまるで別人のように静かだ。照れくさそうに話しながらも、その様子では完全に恋に目覚めたようだ。
───そう。私の特殊能力とは、“その人が恋に落ちる瞬間”までの時間を知ることができるという、あまり得ではない能力だった。
周りに自慢できるような、例えば超能力のようなものであれば、実際に示せたというのに。
何とも地味な特殊能力を与えられたものだ。
つまり人々の頭の上に浮かぶハートの枠に刻まれた時間は、いわゆる“恋に落ちるまでのカウントダウン”なのだ。ちなみに数字ではなく“Error”が刻まれている人は、たまに存在するであろう絶対に誰かを好きにならない人だったり、カウントダウンを終えて恋をしている最中の人のことを指す。
万が一その恋が終われば、また次の恋へとカウントダウンが表示される仕組みだ。
高校一年の春に、この能力に目覚めてから早一年半以上経過した今、それ以外にこの能力の説明がつかなくなっていた。
せめて夢の中にでも神様が出てきて、『あなたは人が恋に落ちる瞬間までの時間を見ることができます!』と宣言してくれるのが一番なのだけれど、残念ながら一年半が経った今でも神様が現れる気配はない。
能力を宿してくれるのなら、“ある呪文を唱えると私を好きになる能力”などが良かった。それなら好きな人を手に入れることができるのに、なんて何度も同じことを考えては落ち込んでしまう。
けれどこんなところで諦めてはダメだ。
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