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実は私はこの能力に目覚めて、いくらか実験したことがある。
それは恋に落ちる瞬間をずらしたり、なかったことにすることは可能だろうかということだ。主な実験内容は、カウントダウンが近づいてきた相手を邪魔をするということだ。
例えば仲のいい男友達と遊ぼうとしていた私の友達に、その子の推しのライブチケットが当たったから行かないかと誘う。すぐさま食いついた彼女の頭に浮かぶ時間は、“15 hour”から“2 week”へと変化した。
一番効果的面だったのが“一目惚れ”をするであろう人だ。カウントダウンが近づいてきた人の中で、特に良い感じの相手がいない人たちは大抵“一目惚れ”である。
そのためカウントダウンが“0”になる前に、例えば街中で対象の人物に『偶然だね!』と声をかけると、一時的な“Error”が発生した後、数分後にはまた新たな数字が表示される。
本当によくできたものである。特定の相手がいる場合は数字が延び、一目惚れの場合はまた新たな恋が始まる仕組みらしい。
最初はくだらない能力だと思っていたけれど、今は違う。このようにわざわざ実験までして自分の能力を確かめたのには意味があった。
「はぁ…今日も佐々木くん、かっこいいなぁ」
外の景色が見える窓際の、一番後ろの席。そこが私のお目当てである佐々木くんの席だ。
「また佐々木?
そんなに好きなら近づけばいいのに」
「一応挨拶はできる仲だし…それに、何回か言葉を交わしたことだって」
「はいはい、それも形式的な会話でしょ?
それ以上は進展していないじゃない」
苦し紛れの言葉を見事にぶった斬ってくる千秋。自分の恋愛に関しては純粋な反応を見せるくせに、私のことになると強気発言だ。
「だって佐々木くん、基本的に女子と話さないから…」
もう一度、佐々木くんの席に視線を向ける。あまり群れを好まないのか、彼は大体自分の席にいることが多い。その上、滅多に笑わない彼は本当にクールな人である。
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