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3日後。
ついに勝負の日がやってきた。
朝、佐々木くんの頭上に浮かぶハートの枠に示されている時間を確認すると、“7 hour”となっていた。放課後の帰り道に、一目惚れとなるであろう相手と接触する計算だ。
私は心を熱く燃やし、決心する。自然に、あくまで自然に邪魔をする。あまりに早く邪魔してしまうと、それをも込みでの時間表示になっている可能性もある。
本当にギリギリの、残り数秒が狙い目だ。失敗は許されない。
「どうしたの美麻。
珍しく気合入ってない?」
「今日は何が何でもやり遂げないといけないことがあるの!」
「へ、へぇ…頑張れ」
千秋も私の気合いに圧倒されたのか、それ以上聞かれることはなかった。
決意が揺らがないまま、放課後が訪れる。
佐々木くんが誰かに恋するまで“40 minute”。40分を切っていた。迷わず彼の後を追い、学校から駅までの道のりを歩く。
数メートルの距離をあけながらも、彼を見失わないよう注意する。そして彼と同じ電車に乗ることができた。いつもは一つ車両をずらして乗るけれど、今日は大胆にも同じ車両に足を踏み入れた。
よし、あとはこのまま…このまま?
この後はどうなるのだ。
彼の駅は私より先にある。とはいえ、30分はこの電車に乗っているはずだ。けれど彼の頭上に表示されている時間は30分を切っている。つまり電車の中で一目惚れをするのだろうか。
周りを見渡すけれど、佐々木くんに見合いそうな女性はいない。
いや、待てよ。
見合いそうな女性はいなかったけれど、大学生らしきイケメンが一人、座席に腰を下ろしている。
これはもしかしてボーイズラブ展開!?
想定外の可能性に指先が震える。ボーイズラブ展開でも私は邪魔をしないといけない。
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