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落ち着け自分。特に腐女子というわけではないけれど、佐々木くん×イケメン大学生という組み合わせがあまりにもお似合いで、推せると思ってしまう。
何度も頭の中で二人のボーイズラブ展開を妄想する。これはかなり…いや、でも私だって佐々木くんが好きなのだ。
「……はっ!」
ついボーイズラブ展開に熱中していると、佐々木くんが最寄駅よりもずっと手前の駅に降りていた。彼の頭上に浮かぶ時間を確認すると、“5 minute”まで迫っていた。
あと5分。
あと5分で佐々木くんの恋が始まってしまう。
そもそも、あの大学生らしきイケメンは全くの対象外だったのか。無駄に妄想時間を使ってしまったと、関係のないイケメンを恨んでしまう。
私も慌てて佐々木くんと同じ駅に降りた。ただワンテンポ遅れてしまったせいで、距離が離れてしまった彼はエスカレーターに乗って改札へと向かっていた。
けれど彼がこの駅に降りたことは今までに何回もあった。この駅から数分歩いたところに大きな本屋さんがある。
彼はよくその本屋さんに足を運び、本や雑誌などを購入していた。アクティブ系に見えて実は本好きという展開も推せる。そんな佐々木くんも好きだ。
「待っ…速くない!?」
けれど今はそれどころではない。私もエスカレーターに乗って改札へと向かえば、すでに佐々木くんの姿を見失ってしまった。
あと5分、正確には5分もしないうちに佐々木くんが私以外の誰かを好きになるなんて絶対に嫌だ。慌てて改札を通り、外に出る。きっと本屋までの道のりに彼の姿があるはずだ。
「あっ」
───佐々木くんの姿を見つけた。
そんな彼はすでに他校の制服を身に纏っている女子二人組から声をかけられていた。もしかして、あの二人のどちらかを好きになるのだろうか。これは一大事である。
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