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すでに接触しているということは、接触前に邪魔をすることができなかったのだ。
佐々木くんの頭上に表示されている時間は“2 minute”。あと2分だ。
目を凝らして佐々木くんをじっと見つめると、心なしか困っているような気がする。けれど女子二人組はお構いなしに、あの佐々木くんの着ている尊い制服のシャツを掴み出した。
簡単に触れていいお方ではないというのに。時間も迫っているため、私は迷わず彼の元へと飛び出した。
「佐々木くん、お待たせ!
ごめんね待たせちゃって」
「……え?」
なるべく大きな声をあげて、彼と女子二人組の間に割り込んだ。一度静かに息を吐いた後、思い切り目の前の女子を睨む。
「な、なにこの人…」
「もしかして彼女じゃない?」
何かを誤解した二人はそれ以上口を開くことなく、そそくさとその場を去った。どうやら二人は佐々木くんへ下心があったらしい。彼を助けられたと思い、ホッと胸を撫で下ろす。
「……お待たせって、何?」
「ひっ!」
その時、背後から低い声が聞こえてきた。
どうしよう。カウントダウンが近づいていたばかりに、自然と邪魔するという目的を忘れていた。
「え、いや…あの、たまたま!
たまたま通りかかって…」
怖くて佐々木くんの表情を見ることができない。もし私の存在すら認知されていなかったら、変な女だと思われてしまう。いや、認知されているはずだけれど、いざ近くに彼がいると怖くなってしまう。
「へぇ、“たまたま”ね」
怖い、本当に怖いよ背後のオーラが。“たまたま”を強調する佐々木くんは、まるで何かを察しているかのようだ。
「でもまあ、かっこよかったよ。
さっき彼女たちに向けてた睨み」
「み、見えてたの!?」
咄嗟に振り返ると、想像以上に佐々木くんが近くにいた。
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