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至近距離で目が合ってしまい、体が硬直してしまう。
「やっと俺の目を見た」
「……え」
「可愛い顔しているね、俺の“ストーカー”さん?」
「……っ!?」
ぶわっと顔が熱くなり、咄嗟に視線を外す。決して彼のストーカーへと化していたわけではない。
それは断じて拒否させていただきたい。けれど今は拒否の言葉よりも先に、彼の頭上浮かぶハートの枠内に“Error”の文字が表示されているかを確認したくて───
「……う、そ」
予想では“Error”が表示されていると思っていた。けれどそこに“Error”の表示はなく、代わりに“1 second”と表示されていた。
さらには瞬きをする間もなく、私の目の前で“0”へと切り替わった。
「ふはっ…君、本当に面白いね」
夢だと思った。
私が彼に落ちた時と同じ嬉しそうな笑顔を浮かべていて、目眩がするほど眩しかった。どこか幼いその笑顔にはギャップを感じられ、苦しいほどに胸が締め付けられる。
「せっかくだし少し話そうか?
そうだな…ストーカーを始めたきっかけとか」
「それは誤解で!
す、ストーカーなんて物騒なことをした覚えは…」
「ふーん、そっか。
言い逃れができたらいいね?」
佐々木くんはどこか意地の悪い笑顔を浮かべるけれど、初めて見る表情に胸の高鳴りが止まない。まずは彼のストーカーではないという誤解を解くべきはずなのに、思考が鈍くなって彼の後ろを歩くのがやっとである。
ようやく顔を上げて、再び彼の頭上へと視線をやれば、ハートの枠内には“ Error”の文字が浮かんでいた。
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